アレルギー疾患の発症には、遺伝的素因と環境因子が大きく関わる。早期の環境因子として臍帯血と母乳中のサイトカインについて検討した。臍帯血ではTh2であるinterleukin(IL)-4産生Tリンパ球が優位で、Th1であるinterferon gamma(IFN-γ)産生Tリンパ球は殆どないが、胎内感染(臨床的敗血症)ではIFN-γ産生Tリンパ球の増加がみられ、その後のアレルギー疾患発症の頻度が低いことを明らかにした。また、母乳栄養がアレルギー疾患の発症に及ぼす影響について母乳中のサイトカインの面から検討した。検討した母乳中のサイトカインは(1)免疫抑制作用があり経口免疫寛容に関与しアレルギーを寛解に働く可能性があるtransforming growth factor-β1(TGF-β1)、(2)IgE産生を抑制するTh1サイトカインであるIFN-γ、(3)IFN-γとLPSによって誘導され、活性化したTリンパ球とモノサイトを走化するケモカインであるIFN-γ inducible protein 10 kDa(IP-10)、(4)IgE産生にかかわるTh2リンパ球の活性化により上昇する遊離した表面抗原であるsolubleCD30などである。母乳中のサイトカインと児のその後のアレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎など)発症との関連を検討した。その結果、2才までのアレルギー疾患発症の母乳(1ヵ月時)中のTGF-β1は非発症例に比し有意に低値だった。アレルギー疾患発症例のIFN-γは非発症例に比し低い傾向がみられたが統計学的有意差はみられなかった。IP-10は血清中に比し母乳中には高濃度に存在したが、アレルギー発症に及ぼす影響はなかった。sCD30は測定感度以下だった。アレルギー発症抑制には母乳中(TGF-β1)の関与が大きいものと考えられた。
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