全国から酵素診断を依頼された52例のLeigh脳症患児から得た培養細胞を検索して26例の病因を明らかにした。その内訳はPDHC異常症5例、複合体I欠損症4例、複合体IV欠損症4例、ミトコンドリアDNA異常症13例(T8993G変異10例、T8993C変異2例、A8344G変異1例)であり、ビタミンB1反応性PDHC異常症が4例みられたことより、本症の頻度が高いこととビタミンB1大量療法の有用性が判明した。 最近、欧米人の複合体IV欠損症のLeigh脳症患児においてSURF-1遺伝子の変異が見出されたので、日本人で複合体IV欠損を伴うLeigh脳症患児6例におけるSURF-1遺伝子解析を行い、3名においてSURF-1蛋白を大きく変化させる新たな遺伝子変異を見出した。これら3例とも培養リンパ球のCOX活性は正常対照値の20%以下に低下していた。症例1はエクソン5に2塩基(AG)の欠失がホモ接合体としてみられ、この変異により4番目に停止コドンが出現した。症例2はエクソン7にC→Tへの塩基置換により新たな停止コドンが出現する変異とエクソン8に26塩基の欠失と2塩基の挿入を伴い、8個のアミノ酸が欠失する変異を認めた。症例3は症例1と同じ変異(エクソン5に2塩基(AG)の欠失)がホモ接合体として認められた。今回SURF1遺伝子を解析した6例中3例に新たな変異が見いだされた。そのうち2例ではエクソン5に2塩基(AG)の欠失がホモ接合体としてみられ、しかも2例の両親は血族結婚でないことより、この変異は日本人では比較的多くみられる可能性があると思われた。これらの研究により、日本人のLeigh脳症患児の病因としてSURF-1遺伝子が重要であることが判明した。
|