自家末梢血より分化増殖させた樹状細胞を腫瘍特異抗原で感作し、後患児に投与することにより体内での腫瘍特異的細胞傷害性T細胞誘導し、臨床的に抗腫瘍効果を得ることができるか否かを検討した。本年度は治療抵抗性進行神経芽腫症例について新たに検討を加えた。 1.樹状細胞の調製:患者末梢血中または自己末梢血幹細胞移植用に採取した末梢血の単核球をGM-CSFおよびIL-4を添加した自己血清加RPM11640中で培養し、1回あたり3x10^6個の樹状細胞を得た。 2.腫瘍特異抗原の調整:患者腫瘍組織の染色体転座に起因する融合遺伝子の塩基配列を決定し、融合部分を含む腫瘍特異的ペプチドを合成した。融合遺伝子が同定できない症例では、腫瘍細胞の融解物を作成し腫瘍抗原とした。 3.樹状細胞の感作と患者への投与:樹状細胞を浮遊させた培養液に腫瘍抗原を添加し感作を行った。感作樹状細胞を十分に洗浄し、ただちに皮下投与した。投与は1または2週ごとに外来で行った。 4.治療効果:樹状細胞投与による副反応は全く発現しなかった。滑膜肉腫症例では、肺内の再発腫瘍増大が一過性に抑制され胸水が減少した。治療抵抗性Ewing肉腫も樹状細胞投与により腫瘍縮小が観察された。神経芽細胞腫3例中2例は再発をきたしたが、1例は8か月間寛解を維持している。また、本療法により腫瘍細胞融解物に対する皮膚遅延型過敏反応が増強した。免疫学的検査では、患者末梢血中にHLA-DR陽性CD8陽性の活性化リンパ球が増加した。細胞内サイトカインの検索ではインターフェロンγ産生性CD8陽性細胞が増加しており、患者体内での細胞傷害性T細胞の誘導が示唆された。 5.結論:本療法により体内で腫瘍特異的細胞傷害性T細胞が誘導され、部症例では臨床的に抗腫瘍効果を認めた。樹状細胞を用いるがん免疫療法は、化学・放射線療法抵抗性の腫瘍に対する新たな治療法として有望である。
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