GH-1遺伝子のイントロンにありスプライシングに重要な部位と考えられているintron splicing enhancer (ISE) motifに注目して遺伝子解析を行うことを目的に家族と本人の同意取得した重度から軽度の特発性GH分泌不全症20例を解析した。 我々は、『第3イントロンにIVS3+28G→A変異を認めた遺伝性成長ホルモン単独欠損症II型』を報告した。遺伝性成長ホルモン(GH)単独欠損症(IGHD)II型は常染色体優性遺伝の疾患である。これまでもGH-1遺伝子の第3イントロンの変異によりスプライシング異常をおこす例が報告されているが、我々が報告した家系の遺伝子分析の結果、intervening sequence (IVS)3の5'側から28番目にG→Aのヘテロ接合性変異が確認された。特に本症例の変異部位はpre-mRNAにスプライスゾームが作用するISE motif(XGGG repeats)の部分に相当し、その変異の位置によってエクソン3のスキップ度合いが異なり、スプライシングに重要な部位と考えられる。これまで報告されているIGHD II型におけるIVS3の他の部位の変異でも第3エクソンのスキップが起こることが知られており、本症例に認められる変異でも同様にdominant negative effectが生じていることを示唆している。さらにはそのスキップ度合いによりGH分泌不全の程度が異なり、臨床的には低身長の程度に影響をしているものと考察した。 結果であるが、解析した特発性GH分泌不全症20例をうち第3イントロンの異常のあるものは認められなかった。他のイントロンのISE motifについて、部分的に塩基配列の異常があるイントロンが確認されたが、報告例と同様の機序が考えられるか否か、また病的意義について不明である。臨床的に差異はないが、今後の課題とする。
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