研究概要 |
目的:今年度の研究では、インターロイキン18(IL-18、別称インターフェロン・ガンマ誘導因子)が小児アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息)の病態に関与していることを明らかにする。 対象及び方法:16名の小児アトピー性皮膚炎、18名の小児気管支喘息およびアレルギー歴のない健康小児19名から各々末梢静脈血を採取し、単核細胞層を得る。エンドトキシン(LPS)やレクチン(PHA)で刺激しながら培養し、産生されるIL-18,インターフェロン・ガンマ(IFN-g)およびIL-13量を酵素抗体吸着プレート法で測定する。細胞内のIFN-g・メッセンジャーRNA(IFN-g・mRNA)量は比色プレート法で測定する。 結果:LPS刺激により産生されたIL-18量は,アトピー性皮膚炎(平均172pg/ml),気管支喘息(平均189pg/ml)ともアレルギー歴のない小児(平均118pg/ml)に比べ高値であった。レクチン(PHA)刺激によるIFN-g産生量は逆に、アトピー性皮膚炎(平均6.8U/ml),気管支喘息(平均7.3U/ml)ともアレルギー歴のない小児(平均20.7U/ml)にくらべ低値であった。IL-13産生量およびIFN-g・mRNA生成量については3群間で有意差を認めなかった。 結論:小児アレルギー疾患末梢血単核細胞においては、IL-18が産生されやすい状態にあることが明らかになった。この結果は以下の2点を示唆する。(1)IFN-g産生量が逆に低下していたことから、アレルギー疾患をもつ小児ではIL-18刺激がタイプ1型T細胞に有効に伝達されない。(2)小児アレルギー疾患におけるIL-18の働きかけは、IFN-g産生系ではなくアレルギー反応を誘導するタイプ2型T細胞に行われている。
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