小児期腎不全の原因として重要な遺伝性疾患について分子生物学的手法を用い、病因、進展機序を解明し、発症腎障害の早期診断、進展阻止および治療を可能にすることを目的に研究を行う。今回は小児腎不全の原因として2割を占める巣状分節性糸球体硬化症について研究を行った。 1.本症の遺伝子解析:家族性または若年発症で末期腎不全へ進行した巣状文節性糸球体硬化症患者より採血を行う。その末梢血白血球から染色体DNAを抽出する。常染色体劣性遺伝の巣状分節性糸球体硬化症の原因遺伝子NPHS2は8個のエクソンより構成されるが、その各エクソンについてオリゴヌクレオチドプライマーを作成する。PCR法により増幅後、直接塩基配列を決定する。6家系の患者について解析を行ったところ、いずれもcoding領域には遺伝子変異が認められなかった。これらの患者については、NPHS2の調節領域の異常、または常染色体劣性遺伝型の巣状分節性糸球体硬化症をおこす他の遺伝子異常であると考えられる。 2.Podocinの多クローン抗体作成とその局在 NPHS2遺伝子産物はPodocinである。Podocinのアミノ酸配列から既存の蛋白と相同性の少ない部分を選択し、N端とC端に各1個合成ペプチド(約15個のアミノ酸)を作成する。その合成ペプチドを用いウサギを免疫し、多クローン抗体を得る。正常人腎組織での存在様式を蛍光抗体法、酸素抗体法にて検討する。結果:Podocinは腎糸球体に局在し、あたIV型コラーゲンa5鎖やynaptopodinとの二重染色にて、Podocinはこれらの蛋白に一致して腎糸球体の血管係蹄に存在することが解明された。今後は、Podocinの各種腎炎での存在様式とその生理機能について研究を行う。
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