研究概要 |
新生児,乳児期のTTVの感染経路について,N22およびUTRに設定したプライマーを用いて臍帯血,母乳,唾液のTTVの検出率を調べると,N22系では0%,0%,50%(但し母親陽性例では100%),UTR系では11.8%,34.6%,96,2%(但し母親陽性例では100%)であり,感染経路は経胎盤感染以外の感染経路(母乳,唾液)が示唆された(Tohoku J. EXP. Med.,2000,191,203-207).また,N22系を用いて,小児の非A〜C型急性肝炎例で遺伝子型を検討すると,10例中8例が1型であったのに対し肝機能正常例では25例中8例が1型,他は全例1型以外であった.すなわち小児の非A〜C型急性肝炎例では1型の関与が示唆された(Tohoku J. Exp. Med.,2000,191,233-239). そこで,UTR系で10例のTTV陽性,2例のTTV陰性母親から生まれた児において経時的にTTV検出の有無を検討すると,前者では10例中9例が生後1.5〜8ヵ月の間でTTVが陽転化したのに対し,後者では陽転化例はなかった.このことはTTV感染例の多くは1歳以内に母親から感染していることを示唆した.その場合両者で検出されるウイルスの塩基配列の相同性を検討すると,極めて類似する場合と10%以上変異している場合があり,母親のminorな株が感染する頻度が高かった.しかしUTR系でみる限り肝機能異常との関連性はなかった.現在,N22系において多数例を対象とし,遺伝型1型と肝機能異常との関連性を示唆する成績を得ている(投稿予定).またTTVの1亜型であるSENVの1亜型(D型)では劇症肝炎例での検出率が高い成績を得ており,この点に関しても更に検討する予定である.現時点では,小児の非A〜C型急性肝炎例の一部の原因としてTTVが関与していることが示唆される.
|