ストレプトゾトシン(STZ)投与糖尿病ラットを用いて糖尿病性腎症を作成し、テトラヒドロビオプテリン(BH4)投与による予防効果を検討した。STZ群では第9週でアルブミン尿を認め、第14週まで糖尿病性腎症が進行した。しかし、BH4(20mg/kg)を22週齢まで連日投与していた(STZ+BH4)群では腎症の進展は認めなかった。腎の内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現はSTZ群では減少していたが、(STZ+BH4)群では減少していなかった。これらの結果はBH4が1型の糖尿病性腎症の発症にかかわり、その進展を予防する効果があることを示唆するものと考えられた。次に、自然発症糖尿病(OLETF)ラットを用いて糖尿病性腎症を作成し、BH4投与による治療効果を検討した。OLETFR群では第13週で蛋白尿を認め、第61週まで糖尿病性腎症が進行した。しかし、BH4(20mg/kg)を61日まで連日投与していた(OLETFR+BH4)群では蛋白尿はOLETFR群に比べ有意に低下し腎症の進展が改善していた。また、BH4投与による治療効果を、eNOSの発現という観点に基づき抗E-NOS抗体を用いた組織蛍光抗体法で組織学的に検討した。OLETFR群の腎のeNOSの発現は減少していたが、(OLETFR+BH4)群では、腎のeNOSの発現は減少していなかった。 これらこれらの結果はBH4が1型、2型ともに糖尿病性腎症の発症にかかわり、その進展を予防する効果があることを示唆するものと考えられた。
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