1型糖尿病の病因は、膵β細胞の自己リンパ球による破壊である。1型糖尿病患者の末梢血中には、膵β細胞特異抗原を認識するリンパ球が存在する。膵臓生検や剖検の報告ではCD8+Tリンパ球が多く見つかる。我々はCD8+Tリンパ球に注目して研究してきた。膵β細胞特異抗原のインスリンに絞り、日本人に保有頻度の高いMHCクラス1A2とA24に絞った研究をおこなった結果A24に結合したインスリンの断片ペプチド(B chain 22-30:LVLYCGRG)に対して特異的なCTLの存在を証明し報告した。 今年度は以下のような研究をおこなった。 1.Tリンパ球の標的抗原としてインスリシのβ鎖全域を対象とした検討を行うために、アミノ酸9個からなるオーバーラップした断片ペプチドをさせ22個を合成した。 2.抗原特異的リンパ球をその特異性を失わずに継代培養を続けるための手段として、抗CD3抗体をイミュノビーズにコーチングしたものを作成し定期的なTリンパ球刺激を続ける用法を開発中である。 3.すでに報告したインスリンの断片ペプチド(B chain 22-30:LVLYCGRG)を用いて、HLAクラス1のA24抗原・抗原ペプチド4量体を合成中である。この4量体をもちいたインスリンペプチド特異的リンパ球の検索を発症早期1型糖尿病患者の末梢血中から行う。 4.HLAクラス1のA24抗原・抗原ペプチド4量体による末梢血中の抗原特異的CD8リンパ球のフローサイトメトリーでの解析方法の実用性を検討するために、HLA-A^*201 EBVBMLF1(GLCTLVAML)4量体を作成した。現在この4量体をもちいてEBウイルス感染症の末梢血中ウイルス特異的リンパ球の同定、in vitroで作成したウイルス特異的リンパ球特異性の維持について検討中である。
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