胎児の頻拍性不整脈における循環を知る目的で、綿羊胎仔の心房をペーシングにて高頻度刺激した際の血行動態を検討した。 妊娠した綿羊の胎仔を開胸して左房にペーシングリードを逢着した後、胎仔の心房を200、300、350、400/分でペーシングして心電図を記録し、中心静脈圧、大動脈圧を測定し、心エコー図検査にて心拍出量を推定した。 ペーシング前(コントロール時)の胎仔心拍数は174/分であった。中心静脈圧は、コントロール時に比べて350、400/分でペーシングした時に上昇した。大動脈圧は、コントロール時に比べて300、350、400/分でペーシングした時に低下した。左室と右室の心拍出量は、コントロール時に比べ350、400/分で心室ペーシングした時に低下した。以上の結果から、上室性頻拍モデルの胎仔においてペーシングレート300/分から大動脈圧が低下し始め、レート350/分で中心静脈圧が上昇、左右の心拍出量の低下が起こり、血行動態が不安定になっていた。 緬羊胎仔を270〜300/分のペーシングによる頻拍の状態で脳血流量を頚部のエコードプラ法で測定、次いで、胎仔にL-NAMEを静注した。大動脈圧は上昇したが、脳血流はL-NAME静注後減少し始め、約3分で最低値となりこれを維持した。胎仔の頻拍中の脳血流の維持には内因性一酸化窒素が重要で、その欠乏は胎仔脳循環維持に重大な支障を来す。
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