血管新生の制御は固形腫瘍の治療標的の一つである。血管内皮細胞は血管新生において重要な役割を担っており、内皮細胞の増殖、分化、支持細胞との相互作用を制御する因子群としてAngiopoietin(Ang)/Tie2受容体、VEGF/VEGFR等がある。我々は、Ang1は血管内皮細胞の生存に関与しAktのserine473のリン酸化やB-Rafの活性化をすることを明らかにしてきた。本研究ではまずAktの下流で生存シグナルに関与する因子についての検討を行った。Bad蛋白やForkhead転写因子群についてはリン酸化を認めず、生存シグナルにはCaspase9等他の下流経路の関与が考えられた。また、venous malformationの原因変異として同定されているTie2活性型変異体(R849W)を用いその下流因子のシグナルについて検討した。R849Wは一過性強発現の系ではTie2より高度にチロシンリン酸化されていたが、下流因子であるAktではセリン473やスレオニン308のリン酸化は低く、変異型においては逆に生存シグナルは抑制されている可能性が示唆された。リン酸化Tie2はubiqutinationに関与するCblと複合体を形成しており変異型においてはより分解が冗進している可能性が示唆された。また、近年血管新生において骨髄中の血管内皮前駆細胞が量要な働きを担うことが示され臍帯血にも存在することが報告されている。血管内皮前駆細胞は血管新生抑制因子や制癌因子を組み込み、小児癌治療に応用できる可能性がある。このため、今回臍帯血特に早期産児緕帯血の生物学的特性を検討した。血液および内皮の未分化前駆細胞がよりenrichされているCD34陥性細胞中における内皮前駆細胞に発現しているc-Kitの発現を見てみると、正期産臍帯血のCD34陥性細胞においてはc-Kit高発現細胞が多いのに対し35週以前の早期産児臍帯ではc-Kit低発現細胞が優位に多かった。このことは早期産児臍帯血の血管内皮前駆細胞は量的および貿的に正期産児臍帯血と異なる可能性を示唆し、今後は培養系およびin vivo移植系を用い臍帯血の血管内皮前駆細胞の生物学的特性を明らかにしていく。
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