【目的】気管支喘息の治療において、サルブタモールなどのβ2刺激薬は気管支拡張薬として効果を発揮している。しかし、その一方で循環器系への副作用があることも知られている。そこで今回、ヒトおよびモルモットにおけるPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating peptide)1-27の気道拡張効果および循環器系に及ぼす影響をサルブタモールと比較検討した。 【対象・方法】モルモットの気管、ヒトの気管支標本を調整しマグヌス装置を用いカルバコールにより平滑筋収縮反応を誘導した。その後、PACAP1-27とサルブタモールのdose-dependentな平滑筋弛緩効果を観察した(in vitro)。また、PACAP1-27とサルブタモール吸入によるヒスタミン静注によるモルモット気道収縮に対する抑制効果を比較検討した。さらに、両者の心拍数への影響を検討した。(in vivo)。 【結果】in vitro:1)モルモット気管平滑筋弛緩効果は、PACAP1-27<サルブタモールであった。2)ヒトの気管支平滑筋弛緩効果は、PACAP1-27=サルブタモールであった。in vivo:3)ヒスタミン静注によるモルモット気道収縮に対する抑制効果は、PACAP1-27=サルブタモールであった。4)心拍数への影響は、PACAP1-27<サルブタモールであった 【考察】以上の成績から、ヒトにおいてPACAP1-27は、サルブタモールと同程度の気管支平滑筋弛緩効果を認めた。さらに、モルモットにおいてPACAP1-27吸入は、サルブタモール吸入と比較して心拍数への影響が少なかった。このことからヒトにおいてPACAP1-27は、十分な気道拡張作用があり、さらに循環器系への副作用が起きにくいことが推察された。今後、PACAP1-27は新しい気管支拡張吸入薬として気管支喘息治療への応用が期待できると考えられた。
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