研究概要 |
本研究の目的は、低酸素性・虚血性脳障害における重度の脳障害やてんかんの発生を予防するための治療法のひとつとして、ヒト由来の不死化神経幹細胞・神経堤幹細胞を用いて低酸素性・虚血性脳障害モデル動物脳に神経幹細胞移植を行うことである。 平成13年度の研究実績 (1)神経幹細胞の樹立と分化:ヒト中絶胎児脳を用い、レトロウイルスに組み込ませたv-myc oncogeneにより、高い増殖能を有し、自己複製能と多分化能をもったヒト由来不死化神経幹細胞株(HB1/C4)を樹立した。HB1/C4を、血清(5%FBS、5%HS)を含む培養条件で分化・誘導したところ、神経細胞、オリゴデンドロサイト、アストロサイトへの分化が認められた。また、ヒト中絶胎児の後根神経節を用い、v-myc oncogeneにより高い増殖能を有し、自己複製能と多分化能をもつ不死化神経堤幹細胞(HNC10/C2)を樹立した。HNC10/C2を、血清(5%FBS、5%HS)を含む培養条件で分化・誘導したところ、神経細胞、シュワン細胞、クロマフィン細胞、骨格筋細胞への分化が認められた。 (2)虚血性脳障害のモデル動物作成:興奮性アミノ酸であるカイニン酸をラット腹腔内に投与し、けいれん重積状態を惹起することで海馬の虚血性脳障害モデルラットを作成した。モデルラット脳を灌流固定し、海馬の錐体細胞層を免疫組織化学的方法で検討したところ、錐体細胞層のCA1,CA3,門部の神経細胞の脱落を確認できた。 (3)神経幹細胞移植:現在、ヒト神経幹細胞と神経堤幹細胞を虚血性脳障害モデル動物脳に移植し、移植後の行動変化を分析検討している。神経幹細胞を移植したモデルラット脳を灌流固定し、免疫組織化学的方法により神経回路網の再構築について検討を加えているところである。
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