研究概要 |
(1)神経幹細胞の樹立と分化:ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)神経部門にてヒト中絶胎児脳を用い、レトロウイルスに組み込ませたv-myc oncogeneにより、高い増殖能を有し、自己複製能と多分化能をもったヒト由来不死化神経幹細胞株(HB1/C4)を樹立した。また、ヒト中絶胎児の後根神経節を用い、v-myc oncogeneにより高い増殖能を有し、自己複製能と多分化能をもつ不死化神経堤幹細胞(HNC10/C2)を樹立した。また、ヒト骨髄幹細胞由来の不死化細胞株を島根医大神経内科長井篤氏が樹立した。この細胞株を譲り受け、現在、骨髄細胞の分化誘導、増殖に及ぼす影響、細胞株自身の分化能の解明、神経幹細胞移植への応用に注目して研究を進行中である。この細胞株自身の分化動態を解明することで、他系統細胞への分化誘導が可能となる可能性がある。神経疾患における骨髄間葉系幹細胞株移植および静脈内投与の可能性を検討中である。 (2)虚血性脳障害のモデル動物作成:興奮性アミノ酸であるカイニン酸をラット腹腔内に投与し、けいれん重積状態を惹起することで低酸素性・虚血性モデルラットを作成した。モデルラット脳を灌流固定し、海馬の錐体細胞層を免疫組織化学的方法で検討したところ、錐体細胞層のCA1,CA3,門部の神経細胞の脱落を確認できた。さらに、てんかん原性が獲得される初期の過程で海馬歯状回の神経前駆(幹)細胞から顆粒細胞への分裂増殖の促進現象が認められることを明らかにし、新しく分裂増殖した顆粒細胞が、苔状線維の発芽現象や、海馬の神経回路の再構築に何らかの影響を与えている可能性を見出した。 (3)神経幹細胞移植:ヒト神経幹細胞と神経堤幹細胞を難治性てんかんモデル動物脳に移植し、移植後の行動変化を分析検討している。神経幹細胞を移植したモデルラット脳を灌流固定し、免疫組織化学的方法により神経回路網の再構築について検討を加えているところである。
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