研究概要 |
リピドーシス動物モデルを用いての中枢神経障害の遺伝子の効果をin vitroで客観的に把握するため動物モデルの末梢神経細胞であるシュワン細胞の経代培養細胞の確立を試みた。ニーマンピック病C型は肝脾腫と小脳症状を主症状とするリピドーシスであるが、この動物モデルとしてspm/spmマウスが知られている。このモデルマウスの後根神経節を単離し、10%FCS添加MEM培養液中で培養した。15代の培養の後、不死化した細胞株がモノクローンに樹立された。この細胞株を生化学的に検討したところコレステロールの蓄積並びにコレステロールエステル化の障害が認められた。シュワン細胞に存在するGAP-43、GDNFの発現をRT-PCRで確認したところ今回樹立した細胞株で発現が認められた。また、電顕で細胞株を観察したところ、ニーマンピック病C型の脳内に認められる顆粒状蓄積物質が認められた。以上の結果から今回樹立した細胞株はニーマンピック病C型の表現型を有することが明らかとなった(Watabe K, Ida H et al. J Peripher Nerv Syst 2001,6:85-94)。同様の手法を用いてリピドーシスモデルマウスであるtwicher mouseからシュワン細胞由来の細胞株を樹立した。この細胞株ではガラクトセレブロシダーゼの活性低下を認めるとともに、サイコシンの蓄積とグロボイド細胞が観察された(Shen JS, Ida H et al. J Neurosci Res 2002,68:88-94)。これらのリピドーシスモデルマウス由来のシュワン細胞株は中枢神経障害の遺伝子治療を行う上で重要な役割を果たすと考えられる。
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