研究概要 |
目的:白血病細胞および神経芽細胞腫は小児癌の大多数を占める。我々はそれぞれの細胞株を使用して形態分化が誘導される際の遺伝子発現レベルの変化をgene expression profile (DNAチップ)で検討することを目的とした。 方法:白血病細胞株HL60に対してはビタミンD3を、神経芽細胞腫細胞株SK-N-SH, CHP-134に対しては13-cis retinoic acid を添加し、形態変化をみる72時間まで経時的にRNAを抽出しAffymetrix社のmicroarrayにより2061種類の遺伝子について検討した。 結果:白血病細胞に関しては、接着因子、HLA class IIなど単球としての生理機能を兼ね備えた分子を多く発現していた。一方、神経芽細胞腫においては、2つの細胞株に共通して43の遺伝子発現が減少し、36の遺伝子が増加していた。特にretinoblastoma (RB) familyである、RB1,p107,RB2/p130,p300/CBPおよびE2FのRNA発現が増加しており、RBの抑制因子であるCDK4,cyclin Aの発現が減少していた。加えて神経突起の形成に重要と考えられているcasein kinase IIの発現も増加していた。 考察および結論:今回神経芽細胞腫に関してはRB family分子が中心的役割を果たしていることが判った。今後、RB familyの発現を増加させ、リン酸化などその分子機能を活性化する分子薬剤の開発が将来の治療薬として有望であると思われた。また、DNAチップは分子標的治療の創薬のためのスクリーニングツールとして極めて役に立つ方法と思われた。
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