膜結合型HB-EGF(proHB-EGF)の尿細管障害後の機能および尿細管構造の再構築作用について検討した。方法は、proHB-EGFを、最終分化したラット尿細管上皮細胞から株化されたNRK52E細胞に発現させることにより検討しまた。proHB-EGFは、細胞外domainに、PVENPLYTYDHT構造を有し、P(prolin)の部位で切断され、mature(m)HB-EGFがproHB-EGFから遊離される。そこで、培養過程でのm-HB-EGFのproHB-EGFからの不測な切断を回避するため、この部分の9個のアミノ酸を欠失させ、m-HB-EGFが切断されないproHB-EGFのtruncated mutantを作成し、type I collagen gelによる3次元培養を行なった。proHB-EGF発現mutantをtype I collagenをコートしたPlastic dish上で培養と、培養10時間から12時間後には、小さなcell clusterと短いsingle monolayerを形成する細胞像が観察された。さらに、14時間から16時間後にはにはbranchingが次第に延長されて行く像が観察され、さらに20時間頃より、隣接する進展したbranch同士が連結し、20から24時間目に管腔様構造を形成しながら分化する極性を示し、最終的に、36時間後には尿細管類似の構造を呈した。次に、proHB-EGFの尿細管再構築作用をより明らかにする目的で、無血清type I collagen gelを用いた3次元培養を行なった。その結果、培養1日目で、ProHB-EGF発現細胞は、small cystを形成し、2日目にはこれらのcystは、管腔構造形成の基礎となる極性を持って分化した。培養3日目には、明らかな管腔構造を有する不完全なtubules様の構造を示し、これらは4から5日目にさらに延長、増大し、6日目には成熟した尿細管類似構造物が構築された。構成された尿細管類似構造物の極性を電子顕微鏡にて観察したところ、管腔側には多数のmicovilleを有するapical surfaceを、外側には細胞表面が平滑なbasal surfaceを示す管腔構造特有の極性を持つことが明らかとなった。さらに、構築された管腔構造には、バソプレッシン依存性の水チャネルであるアクアポリンの発現が観察された。以上の成績から、proHB-EGFは、ランダムに増殖した尿細管上皮細胞の管腔構築のためのリアレンジメント作用を持つことが証明された。
|