研究課題/領域番号 |
13670852
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
山下 裕史朗 久留米大学, 医学部, 講師 (90211630)
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研究分担者 |
松石 豊次郎 久留米大学, 医学部, 教授 (60157237)
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 講師 (50228144)
山田 茂人 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (20158190)
石橋 正敏 久留米大学, 医学部, 助教授 (20168256)
岡村 尚昌 久留米大学, 文学部, 助手
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キーワード | 注意欠陥多動性障害 / メチルフェニデート / ミルナシプラン / 薬物療法 |
研究概要 |
平成16年度は、注意欠陥多動性障害(AD/HD)への新しい治療薬として可能性があるmilnaciplan (MIL;セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と従来の治療薬のmethylphenidate(MPH)についての研究を行い、学会および論文報告した。青班核(LC)は、脳内の広範な領域にノルアドレナリン(NA)線維を送っており、覚醒/睡眠や選択的注意、ストレスなどの脳機能に重要な役割を果たす。ラット青班核ニューロンスライス神経活動に対する作用を比較したところ、MILはLCニューロンに濃度依存性の過分極電位を発生させ、抑制性シナプス後電位を増大させた。この作用はMPHと同等の濃度で観察された。両者は、LCニューロンにおけるバックグラウンドの神経活動を減弱させることによって、外界からの神経情報のシグナル/ノイズ比を増大させ、入力情報の弁別性を高めると考えられる。一方MPHは興奮性シナプス後電位に影響を与えないのに対し、MILはその振幅を抑制し、この事実はセロトニンの作用によるものと考えられた。両者は、NAの再取り込みを阻害し、シナプス間隙のNA濃度を増加させ、LCニューロンの活動性を抑制する。しかし、MILはMPHと異なり、NA放出作用はなく、セロトニン再取り込み阻害作用をもつので、ADHDに併存しやすいうつ症状に対して新たな治療効果が期待できる。今後、臨床応用を検討すべき薬剤である。平成16年度は、海外の薬物療法、非薬物療法に関する最新の情報も海外での学会、見学や研修を通じて得たので、小児臨床薬理学会、小児心身医学会、小児精神神経学会などの学会で発表および論文報告した。本研究の成果は、平成17年に完成する「小児科医のためのADHD診断・治療ガイドライン」に盛り込まれる予定である。
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