研究概要 |
糖原病III型はグリコーゲン脱分枝酵素(AGL)の遺伝的欠損症で、臓器に異常グリコーゲンが沈着し、多彩な臨床症状を呈する先天性代謝異常症である。私達は、7つのエスニックグループに属する糖原病III型患者10家系(中国1、日本1、スリランカ1、ドイツ3、カナダ2、トルコ1、エジプト1)11例の遺伝子解析を行ない、12個の遺伝子変異[ナンセンス変異5(R34X,W225X,R864X,Y1148X,W1327X)、スプライシング変異4(IVS7+5G>A,IVS14+1G>T,IVS21+1G>A,IVS32-12A>G)、塩基欠失2(750-753delAGAC,1019delA)、プロモーター領域の点変異1(-949C>T)]を同定した。このうちは、R34X,W225X,Yll48X,IVS7+5G>A,750-753delAGAC,1019delA,-949C>Tの7個は今までに報告のない新奇な変異であった。ナンセンス変異、スプライシング変異や塩基欠失の結果、C端が失われた短縮蛋白が予想され、いずれの患者のAGL活性も著減しているので、C端に存在するグリコーゲン結合部位がAGLの機能に重要な領域であることが支持された。それぞれのエスニックグループによって遺伝子変異の状況は異なっており、複数のエスニックグループに出現した変異も見つかった。4つのエスニックグループ(トルコ、エジプト、ドイツ、カナダ)については、最初のAGL遺伝子変異の報告になる。遺伝子変異と臨床症状の関係では、IVS32-12A>Gを持つ患者では筋症状が非常に軽かった。^<31>P-NMR spectroscopyで筋細胞内のpHを調べると対照に比べてアルカリ性に傾いていた。
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