研究概要 |
放射線を始め細胞に加わる種々のストレスにより、ミトコンドリアからアポトーシスを誘導する分子が細胞質に放出されることが最近明らかとなった。依然不明な点が多いミトコンドリアに至る上流のシグナル伝達を解明する目的で、この経路において重要な役割を果たしていると考えられるアポトーシス誘導性Bcl-2ファミリーのひとつBimに関する研究を行った結果、今まで報告されている3種のアイソフォームの他に、選択的スプライシングによって生ずる新たな6種のアイソフォームがあることを明らかにした。そのうちの一部はアポトーシス誘導能が全くないこと、細胞内分布もミトコンドリア優位に分布するものと細胞質全体に均一に分布するものがあることがわかった。更に組織によって各アイソフォームの発現プロフィールが大きく異なることがわかり、組織特異的な発現制御機構が存在することが示された。 またDNA損傷で活性化されるp53の標的分子としてFas分子が知られている。Fasの下流にあり、アポトーシス実行分子としてはたらくカスペース8と10にも、プロドメインと呼ばれるアミノ末端領域のみからなる短いアイソフォームの存在が知られている。我々はこれらのアイソフォームが全長カスペース8,10のドミナントナガティブ分子であり、Death Receptorを介する細胞死を特異的に抑制することを発見した。更に我々はカスペース8と10にNF-κBを活性化する働きがあることを見出した。この機能はアミノ末端側にあるDEDという領域を2こもつプロドメインに存在することを確認した。我々は次にNF-κBの上流に位置する分子とカスペース8、10との結合を解析した結果、TRAF2、NIK、RIPといった分子と結合することがわかった。またカスペース8、10によるNF-κBの活性化にはNIKとIKKαが必要であることを明らかにした。
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