研究概要 |
免疫寛容(トレランス)とはある種の抗原に対して生体が抗原特異的に免疫反応を抑止する現象であるが、近年それを担う細胞群が明らかになってきた。その1つは、正常の生体内に存在し、自己抗原反応性のT細胞に対しトレランスを誘導するCD4+CD25+CTLA-4+T細胞で、実験的にこの細胞群を除去すると種々の自己免疫病変が生ずることが明らかにされている。他方、経口的に抗原を投与したり、UVB照射後に抗原を塗布すると、その所属リンパ節に抗原特異的にIL-10あるいはTGF-βを産生し、その抗原に対してトレランスを誘導するCD4+T細胞が出現することも明らかにされている。しかしながら両者の関係は現時点でははっきりとはしていない。そこで本研究では、まずはじめに抗原提示細胞である樹状細胞にUVBを照射し、その後に生ずる樹状細胞の形態学的ならびに機能的変化に関し解析を行い、つぎにこの樹状細胞がトレランスを担うT細胞を誘導できるか否かを検討した。樹状細胞はヒト末梢血CD14陽性細胞をGM-CSFおよびIL-4を加えて培養して得られたものを用いた。低線量のUVB照射により一部の樹状細胞はCD40,CD54,CD80,CD86,HLA-DRなどのcostimulatory分子を未照射樹状細胞よりも強く発現し、また機能的にもT細胞のアロ抗原反応性をより強く誘導した。一方、高線量のUVBでは多くの樹状細胞はアポプトーシスを介して細胞死に陥った。興味深いことに、その際の樹状細胞の表面形質は、CD86がほとんど発現されていないにもかかわらずHLA-DRを強く発現しており、抗原提示細胞がT細胞に免疫寛容を誘導する際の表面形質に合致していた。この表面形質をもつ樹状細胞が、紫外線照射による免疫調節性CTLA-4+CD4+T細胞の誘導に関与している可能性を、現在ナイーヴT細胞とUVBを照射した樹状細胞とを共存培養させる系を用いて検討したところ、中等度線量を照射した樹状細胞は、ナイーヴCD4T細胞に関してはIL-10産生細胞の割合を増加させ、またメモリーT細胞についてはIL-4およびIL-10産生細胞の割合をそれぞれ増加させる傾向が認められた。
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