1)表皮組織およびケラチノサイトにおけるGATA-3の発現パターンをGATA-3特異抗体により染色し、検討した。その結果、GATA-3は表皮全層で発現しているが、より分化した有棘層、顆粒層での発現が未分化な基底層よりも強いことが明らかとなった。さらに、カルシウム・スイッチを用いて培養ケラチノサイトの分化を誘導し、分化の前後でのGATA-3の発現をウエスタン・ブロット法により比較した。その結果、GATA-3の発現はカルシウム・スイッチにより2.5倍に増加した。すなわち、ケラチノサイトの分化によりGATA-3の発現は増強されることが明らかとなった。 2)GATA-3によりケラチノサイトの分化がどのような影響を受けるかを解析するため、以下の実験を行った。ケラチノサイトが最終分化した段階である顆粒層および角層において強く発現しており、分化したケラチノサイトのマーカー分子として用いられるロリクリン分子の転写をGATA-3が促進するかをGATA-3 cDNAを強発現する発現ベクターとロリクリンのプロモーター領域を組み込んだルシフェラーゼ・レポーターをコ・トランスフェクトしたところ、コントロールと比較してGATA-3は3倍程度にロリクリンの転写を促進することが明らかとなった。 3)GATA-3の発現が、ケラチノサイトの増殖にどのような影響を与えるかを、GATA-3 cDNAを強発現する発現ベクターを培養ケラチノサイトにトランスフェクトして、その^3Hトリチウムの取り込みにより解析した。その結果、GATA-3はケラチノサイトの増殖には影響をあたえないことが明らかとなった。
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