申請者はこれまで様々な悪性度の線維性皮膚腫瘍や類症由来培養細胞を多数樹立し、その増殖増殖特性を明らかにし、また免疫染色により各種のサイトカインの腫瘍部での局在を明らかにしてきた。申請者が強皮症の皮膚硬化の形成に重要であることを見出したtissue inhibitor of metalloproteinase (TIMP)は悪性腫瘍の転移能との関連が以前より重要視されている。TIMPはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の阻害だけでなくそれ自体多くの培養細胞の増殖刺激活性を持つことも知られ、腫瘍細胞のautocrine factorとして働いている可能性もある。さらに、申請者はdesmoplastic malignant melanomaや基底細胞癌のように著明な間質反応を特徴とする腫瘍でのfibrogenic cytokineの局在についても報告したが、今回は悪性黒色腫培養細胞のTIMP発現についても検討した。特に遊走能とTIMP-1発現に強い相関が認められた。TIMP-1の発現はTGF-βやIL-6といったサイトカインで修飾された。また、悪性黒色腫組織の免疫染色ではTIMPs、MMPsの発現を調べ興味ある結果を得た。Desmoplastic typeでは一見線維芽細胞様に見える紡錘形の悪性黒色腫細胞にのみ強いMMP-9発現がみられた点は興味深い。これに対し平行して調べた強皮症(一種の過創傷治癒状態とも考えられる)患者の血清中ではMMP-9活性は低下していた。この他、悪性黒色腫の転移に関与する接着分子についても検討中である。
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