遺伝子変異によらない遺伝子発現制御(epigenetics)として、近年、DNAのメチル化による転写抑制が重要視されてきている。筆者は、12年度特定領域(C)研究でアイソトープを用いない、ゲノムDNA全体のCpG island特異的なメチレーションの定量法、non-isotopic cytosine extension assayを確立した。 この手法を用い検索したところ、悪性黒色腫では母斑細胞母斑に比しCpG island-specific hypermethylationがおきていることが、基底細胞癌と有棘細胞癌では、正常表皮に比しゲノム全体のhypermethylationおよびCpG island-specific hypomethylationがおきていることがわかった。 さらに、各種癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化状態をmethylation-specific PCRで検索したところ、有棘細胞癌の約7割、基底細胞癌と悪性黒色腫の約3割でp16プロモーターのメチル化が見られた。また、有棘細胞癌のごく一部でp14プロモーターのメチル化が見られた。E-cadherinプロモーターのメチル化は普遍的に見られ、有棘細胞癌では全例、基底細胞癌と悪性黒色腫の約半数でメチル化されていた。 皮膚悪性腫瘍では、ゲノムメチル化のさまざまな異常が起きていることが見いだされた。
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