皮膚における免疫複合体形成4時間後の浮腫についてばL-selectin/ICAM-1ダブルノックアウトマウス、L-selectinノックアウトマウスおよびICAM-1ノックアウトマウスは、それぞれ野生型マウスに比較して有意に減弱していた。さらにICAM-1ノックアウトマウスおよびL-selectin/ICAM-1ダブルノックアウトマウスは、L-selectinノックアウトマウスに比較して有意に浮腫の減弱が認められた。8時間後の出血についても同様の結果であった。このような浮腫や出血の抑制は皮膚に浸潤する好中球や肥満細胞の減少や皮膚のTNF-αmRNAのレベルの低下と相関していた。とくに、肥満細胞数は野生型マウスで免疫複合体形成の4時間後をピークとして増加したが、ICAM-1ノックアウトマウス、ICAM-1ノックアウトマウスおよびL-selectin/ICAM-1ダブルノックアウトマウスでは、このピークは全く見られず、さらにL-selectin/ICAM-1ダブルノックアウトマウスでは8時間後も免疫複合体の形成以前と比べて肥満細胞数は増加しなかった。同様の白血球浸潤の減少は腹腔内のアルサス反応でも観察された。さらに、腹腔内の好中球や肥満細胞上のL-selectinおよびICAM-1のリガンドであるCD18の発現後検討したところ、これらの細胞では有意なL-selectinおよびCD18の発現が認められた。以上より、アルサス反応による炎症に対しては、ICAM-1とL-selectinは協調的に寄与していることが明らかとなり、これらの細胞接着分子はヒトの免疫複合体病の新たな治療のターゲットとなりうることが示された。
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