我々の開発したマウス胎児皮膚由来培養マスト細胞(FSMC)は、形態、形質、生化学の各側面において皮膚マスト細胞に類似している。FSMCを皮膚マスト細胞のモデルとして、未分化マスト細胞のモデルである骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)と比較検討することにより、これまで十分明らかにされていない皮膚マスト細胞の機能的特徴を明らかにすることを目的として研究を行い、これまでに以下のような結果を得た。 1)産生ケモカインの解析;FSMCおよびBMMCが産生するサイトカインをELISAにて測定した。Th1に選択的に発現する受容体CCR5のリガンドであるMIP-1alpha、MIP-1beta、RANTESはいずれもBMMCのみで選択的に産生され、FSMCにおいてはBMMCの1/20以下しか産生されなかった。FSMCではBMMCに比してIL-13の産生が多いこともあわせると、皮膚マスト細胞はBMMCに比してよりTh2反応に特化したマスト細胞と考えられる。これらの結果については2001年12月の日本免疫学会総会で発表した。 2)Toll-like receptorsの解析;BMMCとFSMCとでmRNAの発現を比較すると、TLR4は両者で発現がみられたのに対し、TLR3とTLR9はFSMCにおいてのみ発現がみられた。次にTLR3のリガンドpoly(I : C)またはTLR9のリガンドであるCpG合成オリゴを加えると、いずれのリガンドに対してもFSMCでのみ、1)IκBαのリン酸化、2)サイトカインTNFα、IL-6の産生、および3)MIP-1α、MIP-2などのケモカイン産生がみられ、BMMCではいずれの反応も認められなかった。さらにFcεRIの活性化を介した刺激とは異なり、TLRを介した刺激はIL-13の産生やヒスタミンの脱穎粒を惹起しなかった。このように皮膚マスト細胞はTh2型反応における既知の役割とは別の、自然免疫における役割を担っているものと考えた。これらの結果については2002年5月の米国研究皮膚科学会で発表予定であり、また論文を準備中である。
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