皮膚マスト細胞がTLR3およびTLR9を介して病原体の核酸を認識し、特異な細胞応答を示すことを明らかにした。 我々は皮膚マスト細胞が自然免疫に関与している可能性を考え、病原体特異的分子パターンを認識するToll-like receptor(TLR)ファミリーの解析を行った。皮膚マスト細胞のモデルとして研究代表者の開発した培養系、胎児皮膚由来培養マスト細胞(FSMC)を用いた。ウィルスの二重鎖RNAを認識するTLR3および細菌・ウィルスに特異的なDNA配列CpGモチフを認識するTLR9は、主に樹枝状細胞が発現するものと考えられてきたが、FSMCも1)TLR3/9のmRNAを発現し、2)TLR3/9のリガンドPolyI : CないしCpGオリゴを加えるとTNFa、IL-6、MIP-1a、MIP-2などを産生することが明らかになった。興味深いことに、3)FceRIを介した刺激に対する反応とは異なり脱顆粒およびIL-13の産生はみられず、4)TLR4のリガンドLPSに対しても同じ反応パターンがみられた。これに対し骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)はTLR3/9を発現せず、そのリガンドに対する細胞応答もみられず、LPS刺激ではIL-13を産生し、未分化な性格を示した。TLRを介した刺激こ対してはIL-13を産生しない方が、病原体に対する自然免疫反応に続いてTh1型反応が起こるのに好都合であり、Th2型反応における既知の役割とは別個の、自然免疫における皮膚マスト細胞の重要な役割を示唆している。 このようにBMMCなど従来のマスト細胞培養系では解析し得なかったマスト細胞の新しい機能(I型アレルギー反応だけではなく、自然免疫にも関与しうること)が、皮膚由来培養マスト細胞を用いることによって明らかになった。
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