研究概要 |
プロスタノイド受容体の炎症性皮膚疾患における役割を検討した。接触過敏症のモデルでは、トロンボキサン受容体(TP)欠損マウスが、耳介腫脹、所属リンパ節の腫大、Th1サイトカイン産生の亢進を示し、所属リンパ節のDNBSによる再刺激での細胞増殖の亢進から、TP欠損マウスにおいてTh1型反応の亢進が認められた。プロスタグランジン(PG)E2についてはPGE受容体サブタイプ(EP1,EP2,EP3,EP4)のうちのEP4選択的薬剤とEP4受容体欠損マウスを用いてランゲルハンス細胞におけるPGE2-EP4シグナルの果たす役割を検討した結果、ハプテン刺激により表皮細胞より産生されるPGE2はランゲルハンス細胞に存在するEP4受容体を介してランゲルハンス細胞の所属リンパ節への遊走と所属リンパ節におけるT細胞への抗原提示機能の亢進に働き、皮膚の免疫反応において重要な役割を果たすことが示唆された。毛の生理におけるPGE2の作用をin situ hybridization法によりPGE受容体サブタイプの発現を解析した。また、EP3、EP4受容体についてはそれらの遺伝子欠損マウスでの解析も行った。胎児期皮膚ではEP1、EP2の発現は見られなかったが、EP3は線維芽細胞に、EP4は毛嚢上皮細胞に発現が強く認められた。成長期の毛が多い3週齢マウス皮膚でも胎児と同様の発現がみられ、EP3は毛包周囲の線維芽細胞に、EP4は外毛根鞘にその発現が認められた。また、休止期の毛が多い9週齢マウスではそのような発現はなかった。EP3、EP4の発現は、出生期を含む毛包成長期に特異的にみられ、EP4の発現は毛周期の間で変動することが分かった。また、EP4受容体欠損マウスでは、脱毛後の毛の伸長が遅延する傾向が認められた。このことよりこれらのプロスタノイド受容体のサブタイプを介して毛の成長制御機能が推定された。
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