研究概要 |
我々は独自に作成したマウスSyndecan(Syn)family1〜4細胞外ドメインに対するポリクローナル抗体を用い、皮膚創傷治癒過程(CWH)マウスモデルを用いた、創形成から創閉鎖20日までの表皮におけるSyn発現を免疫組織化学的に検討、並びにマウス表皮から培養した表皮細胞を用いた細胞生物学的検討により、Syn1〜4までの分子の発現様態はすべて異なる動的変動を示し、これらの発現がCWH表皮においてそれぞれCWH各相で固有の役割を果す可能性を示た。さらには我々が樹立した培養マウス皮膚由来血管内皮細胞(F-2.F-2C)を用いて誘導した血管新生モデルでは、Syn1、2の発現は、細胞増殖が著明で管腔構造が誘導されない時期おいて強く、分化し管腔構造が形成された時期においては、明らかな減少または消失を認めた。Syn3は、逆に分化することで有意に増強した。Syn4は細胞増殖期で増強し、分化と共に減少した。インテグリンα5発現は分化と共に減少、インテグリンβ1の発現は、細胞増殖と分化の両相において変化を認めなかった。またICAM-1,VCAM-1の発現も両相で変化を認めなかったが、ELAM-1の発現が管腔構造を誘導した分化相で減少したのに対し、PECAM-1とVE-カドヘリンの発現はいずれも明らかな増強を示した。 これらの事実は、CWH新生血管内皮細胞において、細胞増殖時期では、Syn2とインテグリンα5β1の発現が協調して、内皮細胞の遊走、肉芽形成の関与に関係する可能性、また管腔構造が構築維持される分化成熟時期では、PECAM-1とVE-カドヘリンの発現が重要な役割を果す可能性が示唆された。また、Syn3が血管新生においても分化成熟時期に発現増強をみとめたことは、表皮での結果も合わせて考えれば、Syn3は、組織の成熟過程に何らかの役割をCWHで演じる可能性も予見された。
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