研究概要 |
本研究は上皮組織、特に表皮角化細胞においてケラチン線維に結合し、核膜などの細胞内小器官とケラチン線維を架橋する働きのある新規の蛋白質の同定と解析を目的とする。これまでにツーハイブリッド法を用いて単離したケラチン結合蛋白と考えられ遺伝子断片のうち、予備的な実験において核膜への局在が示唆されたクローンについての解析を続けている。このクローンの特性として以下の解析結果を得ている。 1)このクローンに緑色蛍光蛋白(GFP)を結合した融合遺伝子をヒトの培養表皮角化細胞株に遺伝子導入するとこの蛋白は核膜に発現し、抗体染色により観察されたケラチンの局在位置と核膜外側においては一致した。 2)このクローンの全長のcDNAをヒト表皮組織mRNA由来のcDNAライブラリーより単離し、蛋白質翻訳領域および非翻訳領域を含めた全長の遺伝子配列とアミノ酸配列を決定し、蛋白質の高次構造を予想すると、このクローンは全長約5キロベースほどの大きさで、遺伝子データベース上より予想される蛋白質翻訳領域には数個の核移行シグナルと、1つの膜貫通ドメインを有する新規の核膜蛋白である。 3)この核膜上の蛋白質がどのタイプの中間型線維と相互作用しうるのかを決定する。具体的にはツーハイブリッド法を用いて、各種のケラチン(K5,K6,K8,K14,K16,K18)やビメンチン、核ラミン、デスミンとの結合能を検討したところ、このクローンは表皮組織に発現するケラチン14(K14)およびK16の頭部領域と結合した。ノザンブロット法によりラットの各種臓器において、この蛋白mRNAの発現が確認された。 4)現在この蛋白の細胞内での局在や機能を解析するために、全長のcDNAにFLAG等のエピトープで標識した融合遺伝子を培養細胞に導入し、この蛋白を様々なレベルに発現する形質転換細胞を作製している。
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