光顕レベルの観察では、ベイシジンはヒト正常表皮の基底細胞の細胞膜に強く発現し、分化した角質層や顆粒層の細胞には発現されていない。我々は、ウサギ抗ヒトベイシジン抗体、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgGおよび15nm径のコロイド金標識ストレプトアビジンを用いた免疫電子顕微鏡的手法にて、正常ヒト表皮構成細胞におけるベイシジンの超微局在について検討した。11例の正常皮膚試料を材料とし、細胞膜の両側50nm範囲以内のコロイド金粒子の数を数えて、細胞膜の単位長さ(5μm)当りのコロイド金粒子の密度をベイシジンの標識強度とした。 ベイシジンは基底細胞の上面有棘層側と側面基底細胞側の細胞膜に強く発現していた(3.91±0.76/μm)。金コロイドの局在は微絨毛、特に微絨毛の先端に非常に強く認められた(5.32±1.23/μm)。細胞膜の他の領域では標識は低く(0.79±0.31/μm)、デスモゾーム部位と基底細胞の真皮側の細胞膜では標識は認められなかった。有棘層の細胞では、光顕免疫組織化学的に発現がかなり認められたが、免疫電顕では標識は低かった(1.26±0.24/μm)。標識は顆粒層と角質層の細胞膜では認められなかった。これらの結果をpaired-sample testを用いて統計的に解析した。ベイシジンの発現強度は基底細胞膜と上部有棘細胞膜、基底細胞の上面・側面と真皮側下面、および基底細胞の微絨毛と微絨毛間の細胞膜において有意差(p<0.001)が認められた。 以上の結果から、ベイシジンは表皮角化細胞の細胞接着には関与せず分化と関係があり、この分化には微絨毛が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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