本研究において、γδT細胞かTh1/Th2サイトカイン反応のバランスを制御している可能性について検討した。本研究はハプテンを繰り返し同一部位に塗布することにより、アトピー性皮膚炎(AD)類似のTh2反応が惹起されたマウスを用いて検討を行った。つまりγδT細胞欠損マウスに、ハプテンを繰り返し塗布することにより、どのような免疫反応が惹起されるかを明らかにしたいと考えた。結果は、ハプテンを数回外用した後の急性期の病変部ですら、γδT細胞欠損マウスでは好中球を中心とした炎症の遷延化と増悪が認められた。さらにγδT細胞欠損マウスにハプテン塗布を続けることにより、正常マウスに比べ有意に早期にTh2反応へのシフトが起こることが明らかになった。慢性期の病変においても、好中球の浸潤はより著明で表皮を含めた組織傷害の程度も有意に著明であった。このような変化は、γδT細胞を移入することにより有意に減少した。さらにこのようなハプテン塗布時の局所のサイトカイン産生パターンを調べたところ、急性期では表皮内のγδT細胞は速やかにサイトカイン(IFN-γ)を産生することにより、全体の反応をTh1にシフトさせた。しかしハプテンの繰り返し塗布により、これらの表皮内γδT細胞は次第に失われ、それとともに全体の反応はTh2にシフトしていくことが分かった。 このように表皮内に常在するγδT細胞は外からのハプテン刺激に対し、速やかにサイトカインを産生することにより局所の免疫反応をTh1タイプに誘導するが、繰り返しのハプテンの塗布はこの細胞自身を傷害し、結果として反応はTh2にシフトしていくことが明らかになった。
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