研究概要 |
我々は平成13年度の本研究において、末梢CD4+T細胞におけるfucosyltransferase-VII(FucT-VII), CLAの発現パターンが、アトピー性皮膚炎(AD)では健常人と異なることを明かにした。つまり、健常人では皮膚への遊走能を失ったFucT-VII-CLA+の分画が最も多く存在していたのに対し、ADではE-selectinとの結合能の高いFucT VII+CLA+の分画が著増していた。そこで本年度は、実際に炎症のおきている皮膚局所浸潤細胞におけるFucT-VII、CLA各々の発現パターンをADを中心として検討した。 1.AD表皮内浸潤細胞はFucT-VIIH+CLA-;7.3%,FucT-VII+CLA+;57.6%,FucT-VII-CLA+;34.1%と末梢血と同様にFucT-VII+CLA+の分画が最も多く認められた。 2.AD真皮浸潤細胞の検討では、FucT-VII+CLA-;31.7%,FucT-VII+CLA+;37.8%,FucT-VII-CLA+;30.5%と3の分画が均等に存在していた。 3.対照的に尋常性乾癬表皮浸潤細胞の検討では、FucT-VII+CLA-;2.6%,FucT-VII+CLA+;39.6%,FucT-VII-CLA+;57.8%とFucT-VII-CLA+分画が最も多くみられた。 4.さらに乾癬真皮は、FucT-VII+CLA-;2.9%,FucT-VII+CLA+;10%,FucT-VII-CLA+;87.1%と圧倒的にFucT-VII-CLA+分画が多く認められた。 以上の所見から、FucT-VIIは真皮に比し表皮でより発現し、リンパ球が表皮内に遊走する上でも何らかの機能を担っている可能性が示唆された。
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