研究概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)では末梢血中のCLA陽性T細胞が健常人に比べ有意に高く、これは皮膚に遊走し炎症を惹起する細胞の増加と考えられている。しかし逆に、皮膚ホーミングT細胞の皮膚への遊走が阻害された結果としての増加の反映とも解釈出来る。我々はfucosyltransferase-VII(FucT-VII)抗体を用いて、皮膚ホーミングT細胞にはFucT-VII^+ CLA^-,FucT-VII^+ CLA^+,FucT-VI^- CLA^+の3つのsubpopulationが存在することを明らかにした。本研究では健常人とAD患者末梢血中のこれらsubpopulationの頻度と、そのE-selectinの結合能について比較検討した。健常人末梢血CD4^+T細胞ではFucT-VII^- CLA^+分画が最も多かったが、この分画はE-selectinとの結合能は低く、むしろ皮膚から末梢血中へ戻ってきた細胞である可能性が考えられた。それに対し、最も良くE-selectinと結合するのはFucT-VII^+ CLA^+T細胞であることがわかった。一方、AD患者末梢血中ではFucT-VII^+ CLA^+分画が健常人(4%)の3倍(11%)まで増加していた。次に、実際にこれらの分画におけるESL結合能を検討し、さらにADでの関与が示唆されているケモカインレセプターとの相関性についても検討した。AD患者末梢血中ではESL結合能を有するCLA陽性細胞(ESL^+CLA^+)が健常人(4〜7%)の約3倍(14%)まで増加し、FucT-VII^+ CLAT細胞の増加と一致していた。また、このESL^+CLA^+分画の大部分はCCR4^+ CXCR3^-でTh2を示した。これらの結果から、AD Th2細胞は皮膚へ効率よく遊走出来ないために末梢血中に増加した状態と考えられた。
|