研究概要 |
In vitroでヒ卜血液中におけるTc-99m-DTPA-ポルフィリン誘導体(ATN-10)の局在を検討した結果、血球への移行率は全体の放射能の6%程度で、混合後6時間まで変化は認められなかった。残りの94%の放射能は血漿中に存在したが、経時的に遊離のTc-99m-DTPAの割合が増加し、放射化学純度は2時間で97%から60%に低下した。血中エステラーゼによるDTPAエステル結合の解離が原因と考えられた。次に、血漿中のATN-10の局在を検討するためにPBS希釈20%ヒト血漿を用いて50μg/mlに調整したATN-10をゲル濾過HPLCカラム(TSK3000SW)にかけ、血漿蛋白のピークと放射能の溶出分画を比較した。血漿蛋白は5分画(1:βリポ蛋白、マクログロブリン2:ハプトグロビン、3:α1リポ蛋白、ハプトグロビン、4:免疫グロブリンG,5:アルブミン)に分けられ、放射能の回収率は80%であった。回収された放射能の55%はDTPAのピークに存在し、遊離したTc-99m DTPAと考えられた。ATN-10と考えられる残りの放射能のうち、47%はATN-10のピークに溶出されたが、53%は、蛋白のピークに一致して溶出され、それぞれの分画の放射能の割合は、6、7、7、9、24%であった。また、腫瘍細胞との結合能をP388リンパ腫細胞株を用いて検討した結果、Tc-99m-ATN-10とP388の結合は、低温(5℃)、代謝阻害剤(NaN3,monensin)の存在下で阻害され、細胞の代謝と関連していることが示唆された。また培地中の血漿蛋白濃度を増すとP388との結合は低下し、蛋白未結合のATN-10がP388との結合に関与することが示唆された。現在、各精製蛋白標品を用いて、ATN-10との親和性を検討し、担体の特定と腫瘍細胞との結合の関連を検討している。
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