本年度の研究実績を箇条書きにして、以下に述べる。 (1)本医学部付属病院に設置されているライナックX線(4MV、10MV、15MV)を用い、入射X線スペクトルの決定法を確立した。これによって、楔、補償フイルター設置による一次X線スペクトル変化及び被照射体内での一次X線スペクトル変化の評価を容易にし、精密な線量計算が可能となった。 (2)同様に、水ファントム及び3層コルクファントム内でのTPR(組織・ファントム線量比)並びにOCR(軸外線量比)を測定した。これらの測定データは、コンボルーション法による線量計算に必要な基本データ(一次線量拡散分布関数、散乱線量拡散分布関数、電子汚染強度関数、コリメータOCRなど)の決定に用いた。 (3)ライナックX線の入射強度分布を決めるために、「線源X線強度分布関数(線源OCR)」及び「コリメータ遮蔽効果関数(コリメータOCR)」の導入方法を確立した。 (4)線量計算ソフトの開発に入った。本格的なソフトは、計算速度が非常に遅いので高速化の試みをした。 (5)クラークソン法を積極的に取り入れて、さらなる高速化を目指す開発にも着手した。この計算原理は、岩崎の開発した一次線量拡散分布式及び散乱線量拡散分布式が解析的に積分可能であることを利用している。
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