研究概要 |
放射線治療に際しての腫瘍と重要臓器の分離法につき,基礎研究を多角的に行った。 【臓器分離の適応ならびに適応患者数の検討】 いかなる状況下で腫瘍と重要臓器の分離が,治療上の利益をもたらすかについて、理論的な考察を行った。30例の多量の胸水、腹水患者のCT, MRI画像をレビューし、形成されたスペースが重要臓器の位置にいかなる影響をもたらすかにつき検討を行った。胸壁直下の胸膜腔、大動脈周囲、腸間膜付着部、ダグラス窩、肝横隔膜間などが、スペースを形成する適合部位と考えられた。また、2000年中に思考された、新規患者754例の放射線治療計画をレビューし、このようなスペース形成により、利益が得られる癌患者数の予測を行ったが、絶対的に利益がある患者は21/754、利益がある程度期待できる患者は56/754であり、総計で全患者の1割程度に利益をもたらしうると考えられた。 【臓器分離の放射線物理学的な利益に関する検討】 大動脈周囲にスペースを形成した場合、腸の放射線量をどの程度減ずることができるかにつき、治療計画コンピュータを使用して検討を行った。その結果、腫瘍の大きさによる変動はあるものの、最小で5mm程度の人工スペースを形成することにより、高線量を照射される腸管の体積は顕著に減少させることが可能であることが判明した。 【臓器分離用のバルーンの作成】 種々の形状のバルーンを作成し、主に犬の肝-横隔膜に挿入し、CTにてスペースの均一性、バルーンの可動性、設置の容易性などについて検討を行った。その結果、長方形または円形の扁平なバルーンが、均一なスペースを安定的に形成しやすいことが明らかとなった。
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