研究概要 |
平成13年度の研究で、人工的スペース形成により利益を受けられる放射線治療症例は全体の1割程度であること、特に大動脈周囲、腸骨動脈周囲、横隔膜下、胸膜下、ダグラス窩などがスペース形成に適した場所であることが解明された。平成14年度は、これらの結果を基にして、スペーサーサイズ、腫瘍の大きさ、重要臓器の大きさ、が治療計画結果にいかに影響を及ぼすかを、ウサギを用いて実験を行った。 ウサギを麻酔科にCTを撮像、画像を治療計画コンピュータに転送した。肝、肺、膨大動脈域、骨盤、に仮のターゲット(腫瘍、φ1,2,3cm)を設置、周囲の腸管、横隔膜、胸壁、膀胱をリスク臓器として設定し、2門、4門、回転原体にて治療計画を施行後、DVHを作成した。 その後、麻酔科に同じウサギの大動脈周囲、腸骨動脈周囲、横隔膜下、胸膜下、ダグラス窩にスペーサーを留置し(1cm厚、φ3,5cm)、スペーサー挿入前と同じくターゲット・リスク臓器の入力を行い、同様に2門、4門、回転原体にて治療計画を施行後、DVHを作成しスペーサーなしの状態との比較検討を行った。 深部臓器と標的臓器間に人工的にスペースを形成することは、特に腸管など重要な直列臓器への線量を著明に軽減でき、治療の安全性を高めることがシミュレーションにより確認された。 この手技を臨床応用するためには、1-2ヵ月の長期間実験動物にバルーンスペーサーを留置し、感染症などの合併症なく、同じ位置に継続的に留置されうることを確認することが条件であり、平成15年度は、バルーンの長期留置に関する研究を行う予定である。
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