目的 : MRIを用いた脳機能画像の一つである拡散テンソル画像を用いて、脳の解剖学的標準化の精度の検討を行った。 方法 : まず、健常人ボランティアにて、断面厚・間隔、頭部の位置・角度を変えて、様々な条件で拡散テンソル画像を現像し、これから計算されるパラメータである拡散トレース(ADC)と拡散異方性の指標であるfractional anisotropy (FA)を元画像と標準化した画像とで比較した。次に、いままでに撮像された脳梗塞の臨床例において元画像と標準化画像とを比較検討した。拡散テンソル解析は1.5テスラの臨床用MRI装置を用いて、スピンエコー型エコープラナー法にて、b factorを1000mm^2/secとした運動検出傾斜磁場(MPG)を6軸方向にかけた拡散強調とMPGをかけない画像を撮像し、これをワークステーションに転送して行った。脳の標準化はSPM(Statistical Parametrical Mapping)99を用い、同じワークステーション上で行った。健常人では、同一症例において、撮像条件に違いによる標準化の精度を、形態学的再現性と機能画像のパラメータの数値の再現性から検討した。臨床例では、別々の症例における標準化による一致度とパラメータの数値の再現性を評価した。 結果 : 同一被験者にて断面厚や間隔を変化させて撮像した各画像を標準化したところ、どのデータをもちいても良好な標準脳への変換が得られ、脳の各部位は同一座標上に投影された。また、頭部の位置・角度を変えて撮像した場合にも良好な標準化が得られた。脳の各部位に関心領域を設定して原画像と標準化画像とでADCとFAとを比較した結果、全体的にFAに比べADCの方が相関は不良であった。頭部の位置・角度を変化させて撮像した2回の測定で、同一の解剖学的構造に関心領域を設定した場合の再現性は元画像よりも標準化画像のほうが良好であった。また、4mm厚の断面で撮像されたものより6mm厚の断面での撮像のほうが相関・再現性は良好であった。が、深部の構造や脳幹部は個人差の影響が残り、一致度は不良であった。元画像と標準化画像とにおけるADCとFAの相関については、健常人での検討と同様でFAに比べ、ADCの相関が不良であった。 結論 : SPM99を用いて拡散テンソル画像も比較的良好な標準化が行え、特に同一被験者での再現性は良好で、経時的変化のより客観的評価に有用と思われた。一方、別々の被験者間での比較には、標準化画像の深部構造の一致率が不良で、画像のsmoothingなどの処理が必要と思われ、さらなる検討が必要である。
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