研究概要 |
【目的】脳拡散テンソル画像(DTI)の標準化につき、1)標準化脳において、脳表や脳深部の構造の位置ズレは、異なる症例群間と異なる時期や違った撮像条件にて得られた同一症例間で差があるか。2)脳内に異常のない症例と比較的明瞭な病変のある症例とで、標準化の形態的な精度に差があるが、3)異なる時期に撮像した同一症例でのDTIを解析する場合、元画像に比べ標準化画像を用いた方が解析精度は向上するか、の3点を検討した。 【方法】健常人ポランティア1例,明らかな脳内病変のなかった臨床例9例、時期を変えて2回の検査の施行された陳旧性脳血管障害6例(12撮像)を対象とした。DTIは1.5T装置を用いSE型EPIにて運動検出傾斜磁場(b=1000mm2/sec)を6軸に印加し撮像。ボランティアでは条件の異なる6種類の撮像を行った.標準化にはSPM99を使用した。標準化したDTIデータから拡散係数(ADC),fractional anisotropy(FA)の画像を計算した。 標準脳それぞれの位置ズレは、標準化b=0画像を用い、大脳前後端、中心溝、橋前端などの脳表構造、脳梁前後端、モンロー孔、松果体、中小脳脚などの深部構造数カ所で測定した。定量性の評価は、元画像と標準化画像のそれぞれの画像上に数力所の関心領域(ROI)を設定して行った。 【結果】標準化脳における位置ズレは、同一症例間では部位により差はなかった。異なる症例間では中心溝が他の部位に比べ有意に大きかった(Kruskal-Wallis, p<.0001)。位置ズレの程度は全体として、同一症例間(平均1.2mm)に比べ異なる症例間(平均2.8mm)で有意に大きかった(Mann-Whitney, p<.0001)。脳内に異常のない症例と血管障害例における位置ズレには有意な変化はなく、疾患例でも比較的良好に標準化されると考えられた。異なる時期に撮像された同一例におけるROI設定の再現性をADCとFA値で検討したところ、元画像に比べ、標準化像による解析の方が、一回目と二回目の相関が良好であった。 【結論】SPM99を用いた脳標準化は、通常の画像で明らかな病変のない症例だけでなく、比較的明瞭な病変のある症例でも良好に行え、臨床例も含め、形態や撮像断面の異なる画像をより高い精度で総合的に解析できる可能性がある。しかし、脳溝などの評価においては、標準化後の位置ズレが比較的大きく、解析時に注意する必要がある。
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