研究概要 |
20名の肝硬変例と5例の非肝硬変例で、超音波ドップラ法を用いてリアルタイムで門脈血流計測を行なった。健常人の門脈波形は定常波である。肝硬変の進行につれて門脈波形は高さを減じ、動脈波形を混在する。さらに進行すると逆転した門脈波形となる。PG-1投与による門脈血流の経時変化をみると、投与後約30秒で門脈流は増加し、5分間以上持続することが確かめられた。肝硬変例でのPG-1に対する反応性は弱く、また遅れる傾向がみられた。進行肝硬変例で、CTAPでの肝実質造影効果が全欠損する例があり、これらでは逆転した門脈のドプラ波形が得られ、選択的な動脈造影で、血流は肝動脈から肝末梢門脈へと移行する。 ウサギの門脈への塞栓物質の注入実験を行なった。大きさ測定ができないGelatin particleを用いた塞栓実験では肝内葉門脈枝のレベルで閉塞した肝の区域にほぼ一致した動脈血流の増加の所見が得られた。末梢域に限定してこの現象が見られる例もあるが一定の法則はない。塞栓物質の大きさと閉塞血管の関係を正確にするため、acryl polymerを主成分とするEmbosphereの500-700μ,100-300μ,50-120μを予備実験として用いて肝動脈内に選択注入した。組織学的に500-700μで肝外動脈,100-30μで葉動脈、50-20μで肝内小動脈の塞栓が得られた。また、これらは血管内で球状形態を保つことが証明された。 上記の臨床研究結果と動物実験から、動脈・門脈間には機能的吻合があり、それは、おそらくpre-sinusoidに存在し、解剖学的に胆管周囲動脈叢に相当すると考えられた。また、胆管周囲動脈叢周辺に到達するには50-100μ範囲の大きさの塞栓物質を用いて血管径のそろった塞栓状態を作成する必要があり、これによって肝血流を制御できる可能性が示唆された。
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