研究概要 |
腫瘍の酸素状態を非侵襲的に測定できれば,放射線治療や化学療法といった治療法の選択だけでなく,その最適な投与量や投与間隔を予測する事が可能である.すなわち治療後の組織の再構築や個々の腫瘍細胞の再酸素化を指標とした腫瘍の個別化が可能と考えられ,最も効果的な抗腫瘍効果を得る治療法を選択できる可能性がある.近年,第2,3世代の低酸素細胞マーカーが開発され,生体内の低酸素細胞を非侵襲的に画像化し,定量することが可能となりつつある.本研究では,これまでの^<31>P-MRSやMRIによるperfusion imageにくわえて,低酸素細胞マーカーによる低酸素細胞イメージングを用いて腫瘍の酸素状態を推定し,腫瘍の再酸素化を指標として生物学的に最適な放射線治療法について模索することを目的とした.マウス移植腫瘍を用いて,種々の低酸素測定法から得られたデータと腫瘍重量との関係を検討した.またそれぞれの方法で定量した値から,推定される放射線感受性について相関関係を算出した.新規低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPは血液中の濃度よりも約8倍のマーカーの集積を認め,正常臓器よりも有意な集積が認められた.また腫瘍重量が増加するほどマーカーは良好に集積する傾向が認められた.^<31>P-MRSによるβ-ATP/Pi及びPCr/Piは腫瘍重量が増加するほど低値を示した.またin vivo vitro assayでは腫瘍重量が増加すると放射線抵抗性が誘導されることが明らかとなった.また低酸素細胞マーカーにより放射線照射後の再酸素化を非侵襲的にとらえられる可能性が示唆され,今後の研究課題と考えられた.
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