研究概要 |
1.目的: 頚部approachによる椎骨動脈波形解析にて、血行動態的椎骨脳底動脈循環不全の診断を得るべく、頭位あるいは体位変換による波形変化を確定することが最終目的である。そのために正常若年成人にて血流波形正常profileを求めた。 2.対象: 23〜31(24.3±1.7)歳の成人男女67名の正常ボランティアおよびめまい患者29名である。 3.方法: 第5頸椎の高位にて最高血流速度,平均血流速度,加速率,PI,RI,血管断面積、血流量を定量した。 4.結果: (1)頚部approachにて椎骨動脈は起始部からC2高位までが観察可能であったが、定量性が担保されたのはC3,C4、C5、C6の4つの高位であった。全例においてColor flow mapが明瞭で、血管角度が適当と考えられたのはC5高位であった。 (2)男女2名ずつに片側(右1名、左3名)の椎骨動脈の波形異常が見られ、正常破格と考えられた。この正常破格の存在割合は、ほとんど左右差の無い頚動脈に比して有意に高いと予想された。 (3)血流量の分配は左優位群(右椎骨動脈血流量/全椎骨動脈血流量<0.45)が35名(男性22名、女性13名)、左右均等群(0.45〜0.55)が15名(男性7名、女性8名)、右優位群(>0.55)が13名(男性7名、女性6名)であった。左右差のある例が多く(48/63、76%)、左椎骨動脈優位の者が明らかに多かった。 (4)左優位群の左右RIにおいて男女間に有意差が見られた。また、左優位群、右優位群の劣位側のPI,RIにおいて男女間に有意差が見られた。 (5)波形変化の指標としては、PI、RIが最も適当と考えられた。 (6)頭位あるいは体位の変換によるPI、RIの変化により、29例中6例にて血行動態的椎骨脳底動脈循環不全と診断しえた。
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