悪性腫瘍の放射線治療で、原発病巣に線量を集中して、周囲の正常組織への線量をできるだけ減少するため、多分割絞りを用いた不整形照射野が使用される場合が多くなっている。この不整形照射野に対する線量計算の最適な方法とその精度を確認するため、測定を行った。9種類の不整形を設定し中心とその他の数点を選び基準の深さで線量を測定し、基準の照射野での線量に対する比を出力係数(照射野係数)として求めた。線量計算法として、A/P法、A/Pe法、Ac/P法、MD-EAC法、クラークソン法、スーパーポジション法を比較したところ、MD-EAC法とクラークソン法とスーパーポジション法が測定点が遮蔽されている照射野を除いて誤差がほぼ1〜2%と最も精度が良かった。 さらに計算精度を上げるために、散乱線をコリメータ散乱とファントム散乱によるものに分けて計算するカーンの方法を試みた。コリメータ散乱はミニファントムを用いて測定を追加し、計算したところ、6種類の照射野については誤差は、ほぼ1%以下と満足できるものであり、他の計算方法と比較しても3種類の照射野では最も、2種類の照射野では2番目に誤差が少なかった。測定点の遮蔽される照射野はいずれの計算方法においても誤差が多くカーンの方法でも全く改善はみられなかった。また測定点の近くまで遮蔽されている照射野ではクラークソン法とカーンの方法が他の計算法より誤差が多く、スーパーポジション法では誤差がみられず、精度が良いことが分かった。 不整形照射野の線量計算で誤差の少ない方法が、散乱線をコリメータによるものとファントムによるものに分けるカーンの方法であることが確認された。
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