脳血流量の定量は、脳血管障害患者の治療方針の決定や予後の予測に重要である。また、臨床現場では簡便で非侵襲的な定量法が望まれる。そこで本研究の目的は、Tc-99m製剤とスペクトル解析を用いて、簡便で非侵襲的な脳血流測定法を開発することである。 平成13年度は、スペクトル解析を用いた脳血流測定法のソフトウェアを作成した。また、正常ボランティアを対象とした臨床応用を開始し、PET (Positron Emission Tomography)で測定した脳血流量とスペクトル解析で得られた脳血流指標を比較した結果、両者の間には良好な相関があることが判明した。 平成14年度は、更にソフトウェアの開発を進め、スペクトル解析を用いた脳血流測定法のソフトウェアを完成させた。また、開発したソフトウェアの臨床応用を更に進めた。本年度は、主として脳血管障害患者を対象として、本法を用いて測定した脳血流量とO-15標識の水とPETを用いて測定した脳血流量を比較して本法の臨床的有用性を検討した。その結果、臨床的有用性が確認できた。更に、1回目の測定の後にAcetazolamide (Diamox)を投与し、Diamox投与後約10分に1回目と同様の方法で2回目の測定を行い、Diamox負荷前後の脳血流量を測定し、本法とトレーサ2回投与による脳循環予備能の測定の精度や有用性について検討した。その結果、パトラックプロットを用いた従来法に比べDiamox負荷に対して鋭敏であることが判明した。
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