1.ラットにおける脳循環のゆらぎの研究:エコープラナーMRIと連続血圧、呼気中二酸化炭素測定によりラット脳におけるMRI信号ゆらぎを検討した。広汎に(両頭頂葉、海馬、基底核)同期化した0.1Hz近傍の低周波数信号ゆらぎがイソフルレン麻酔下のラットに観察された。血圧・呼気中二酸化炭素の変動とはその周波数では関連は見られなかった。深麻酔下で低周波数信号ゆらぎのスペクトルパワーと血圧変動から推定された交感神経活動との間に有意な関連が認められた。これらの所見より脳循環の低周波数ゆらぎに対する交感神経系の関与が示唆された。 2.生体機能情報の分別抽出方法の開発:局所神経活動に伴う信号変化とその他の起源を有する生理学的変動が混在する場合においても、信号を生理学的起源の異なる構成成分に精度よく分別し、構成成分別の情報を提供する。生体機能計測データに対して画素またはチャンネル毎に入出力関係を記述する数式モデルを構築する。これにより生体機能計測データの信号に含まれる生理学的起源の異なる構成成分の生体機能情報を分別抽出する。 3.生体機能情報の分別抽出方法の機能的磁気共鳴映像法への応用:ダイナミックシステムモデルに基づく解析法をヒトを対象とした視覚系のfMR1実験に適用し、本法のfMRIデータ解析における妥当性、適用可能性について検討した。局所信号変化は視覚刺激パラダイムと全脳参照信号を入力とする自己回帰システムモデルにより適切に予測しえた。第一次視覚野の賦活ボクセルにおいてダイナミックシステムモデルに基づくモデルスタティックゲインと一般線形モデルに基づくβ係数の間には有意な線形関係が認められた。ダイナミックシステムモデルに基づく本解析法は十分な精度を有し、生理学的信号変動を伴う実測データからの脳機能賦活入力に関連する信号変化の抽出に適用可能と考えられた。
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