研究概要 |
緩和時間と電気的特性を生体等価にしたMRI及び癌の温熱療法に使用できるゲル化ファントムを開発した。このファントムの組成は,塩化ガドリニウムGdCl_3(0-140μmol/kg),アガロース(0-1.6wt%),NaCl(0-0.7wt%),カラギ-ナン(3wt%),そしてNaN_3(0.03wt%)である。このファントムの1.5Tにおける緩和時間は,T1=202-1904ms, T2=38-423msである。電気的特性は5-130MHzにおいて,導電率はσ=0.27-1.26S/m,比誘電率はεr=78.1-98.9である。 このファントムの大きな特徴は,1)カラギーナンを形状保持剤として添加していることから自立性のある固形ファントムであり,支持剤を用いずにトルソーの形状を保つことができる。 2)T1緩和剤としてGdCl_3をT2緩和剤としてアガロースを用いていることからT1とT2を独立して変化させることができ,このことからすべての生体組織の緩和時間をファントムにおいて再現することができる。 3)食塩を添加したことから,任意の導電率(但し0.27S/m以上)をもつファントムを作製することができる。 4)品質安定剤,NaN_3を添加したことにより長期間変質することなく使用することができる。 5)T1,T2,導電率を塩化ガドリニウム,アガロース,そして食塩の濃度の関数として数式的に表現したことから,任意のT1,T2,そして導電率をもつファントムの塩化ガドリニウム濃度,アガロース濃度,そして食塩濃度を容易に決めることができる。 このように開発したファントムは,MRIおよびハイパーサーミアの基礎研究,装置の品質管理,さらにMRIとハイパーサーミアを併用した研究において有用である。
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