脳血管障害の成因解析をする上で、血管内での血流の乱れの検討は重要な因子となると考えられる。しかし、この乱流の評価には非侵襲的でかつ客観的な方法が無いのが現状である。今回、MRIを用い血管内の乱流の評価が可能か否か基礎的な検討を行った [方法]ガラス管を用い血管の分岐部を擬似したファントムを作成した。これは、径6mmの本幹が本幹に対して30°と45°の角度で径5mmと3mmの枝に分岐するように作成した。カラス管内にはポンプを用いて水を300、600、1200ml/minの流量で流した。このファントムをMRIで2D TOF法にて撮像した。撮像はTEを6、11、30msのそれぞれで施行した。乱流のもっとも少ない部位として分岐前の部分(a)、軽度乱流が見られる部位として分岐した細い枝の分岐部から14mm離れた部位(b)、強い乱流が見られる部位として同じ枝の分岐部から7mmの部位(c)の3ヶ所で信号強度を測定した。同時に雑音も測定し、各部位、各流速、各TEでの信号雑音比(SNR)を求めた。さらに、健常成人の総頚動脈分岐部において同様の検討を行った。 [結果と考察]ファントム実験では流量300ml/minの場合で部位がa、b、cと乱流が強くなるにつれ、TEが6の場合はSNRが37.2、27.2、20.5と半分程度まで低下したが、TE30msの場合は20.7、12.5、6.0と1/3以下の強い低下が見られた。流量を大きくした場合は各部位での乱流が増強すると考えられるが、各部位、各TEともにSNRの低下が観察された。以上より、複数のTEでのSNRを比較検討することにより、乱流がある程度定量的に評価できる可能性があると考えられた。 健常成人の検討では内頚動脈の起始部ではTEが6msの場合でも強いSNRの低下が観察され、詳細な検討のためには、さらにTEを短縮するなど撮像法自体の改良が必要と考えられた。
|