内頚動脈の起始部では、流体力学における厳密な意味での乱流とは異なるものの、渦流の形成や血流の停滞など血液の流れに乱れがあることが知られている。この血流の乱れの解析がMRIにて非侵襲的に可能か否か基礎的な検討を行った。 【方法】頚動脈を擬似したファントムおよび健常ボランティアの頚動脈において、time of flight (TOF)法、hydrography法、phase contrast (PC)法、tagging法による検討を行った。TOF法ではbandwidth (BW)およびecho time (TE)の変化、flow compensation (FC)の有無による血管内信号強度の変化により血流の乱れを検出できるか否か検討した。Hydrography法では血流の停滞部分の描出が可能か否か検討した。PC法とtagging法では血管内の微小な領域における血流の方向や速度を捉えることにより渦流や血流の停滞を描出することができるか否か検討した。 【結果と考察】TOF法ではBWの変化やFCの有無を利用することよって、血流の乱れを評価することは困難であった。TEの変化により血流の乱れのある部分に信号強度の変化が見られたが、それ以外の部分にも信号変化があり正確な評価はできなかった。Hydrography法では血流の停滞のある部位を高信号領域として描出することが可能であった。PC法やtagging法では血管内の微小な領域での血流の方向や速度を観察することが可能であり渦流も捉えることができたが、微小な範囲内で血流の速度や方向が強く変化する部位は低信号領域として描出された。今後PC法やtagging法をblack blood法など血管壁を詳細に観察できる手法と組み合わせ、様々な程度の内頚動脈起始部狭窄症例の検討を重ねることにより、血流の乱れが血管病変の形成のどのように関連しているか非侵襲的に評価可能と考えられた。
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