研究概要 |
これまでに喫煙と因果関係の大きい肺気腫と肺線維症(慢性・亜急性間質性肺炎)の併存例の臨床像とCT画像を肺気腫単独発症例と肺線維症単独発症例のそれと比較して各疾患群の関与と推移について考察した。対象症例は1996年1月から2001年3月までの約5年間に当大学病院で胸部CTを撮像して、臨床上並びにCT画像上肺気腫または慢性・亜急性間質性肺炎と診断された117例である。内訳は肺気腫単独例が50例、慢性・亜急性間質性肺炎単独例が40例、両者併存例が27例である。各症例において、臨床情報として既往歴、喫煙歴、肺癌の併発件数などを検索し、胸部CTについては、肺気腫ではGrade分類、罹患部位(上、中、下肺野)と肺気腫の病型(小葉中心、汎小葉、傍隔壁)について検討した。また、間質性肺炎については、罹患部位(上、中、下肺野)と間質性肺炎の種々のCT所見(honeycomb pattern, subpleural line, reticular pattern, ground glass opacity, consolidation, bronchovascular bundleのthickening)の有無について検討した。(結果)肺気腫と肺線維症(亜急性・慢性間質性肺炎)併存例の頻度は今回の対象例117例中27例、23%であった。この併存例において、肺癌の併発率は27例中13例、48%と他の2群より優位に高率であった(肺気腫単独例:26%、肺線維症単独例7.5%)。併存例での肺気腫所見では単独例と比較して小葉中心性病変が高頻度であり、罹患部位は上肺及び上中肺野に多くみられ、更に重症度の比較的軽度の症例が多くみられた。併存例での間質性肺炎所見では単独例と比較してhoneycomb、reticular patternが顕著であり、罹患部位は下肺野優位で重症度は軽度の症例が多くみられた。(結論)肺気腫と肺線維症(慢性・亜急性間質性肺炎)併存群では肺癌の発生頻度が高く、この群のCT画像所見を把握し、経過観察の必要患者を予知することの重要性が示唆された。
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